庄司拓平先生の論文が Scientific Repports に掲載されました。
Distance between the center of the FAZ measured automatically and the highest foveal bulge using OCT-angiography in elderly healthy eyes
高齢者健常眼におけるOCT-angiographyを用いて自動測定したFAZの中心と手動測定したFoveal bulge最高点との距離
眼科医にとっても患者さんにとっても「視力」は最も重要な視機能の指標です。視力は網膜の中心部にある「黄斑」が担当しています。黄斑部のさらに中心が中心窩と呼ばれる場所と考えられてきました。現在光干渉断層計などで黄斑部の詳しい画像が取得できるようになりましたが、黄斑部の中心として①中心窩の中心、②視細胞が最も集まっていると考えられている場所(Foveal bulge最高点)、③中心窩無血管野(FAZ)の中心、など、様々な位置が提唱されています。現在でもこれらの厳密な位置の同定は手作業により行われています。我々は光干渉断層血管造影(OCTA)という侵襲のない眼底機器から撮影した画像を基に、自動でFAZとその中心点を同定することを可能にしました。本研究は手作業で同定したFoveal bulge最高点(上記②に相当)と自動計測したFAZの中心(上記③に相当)の位置を健常高齢者を対象に計測したものです。結果として、FAZの中心がFoveal bulge最高点の下方に位置する症例が多いこと、約70%の症例はこの2点間距離が50μm以下であること、逆に50μm以上離れている症例では、垂直方向よりも水平方向に大きくずれていることが分かりました。黄斑部の疾患は多岐にわたりますが、今回の結果は黄斑疾患の病態解明や、手術後の構造変化を解析する上で、重要なデータとなると考えられました。
(図)Foveal bulge最高点から見たFAZ中心までの位置の頻度分布図